笑顔が作れなくても、心は笑ってる|顔面神経麻痺と“伝える”ということ

笑顔が作れなくても、心は笑ってる|顔面神経麻痺と“伝える”ということ

顔面神経麻痺を発症してから、日に日に少しずつ変化はあるものの、いまだに思うように表情が出ません。(頬がピクピク、瞼が僅かに動く程度)
特に「笑顔」を作るのが難しい。
笑おうとすると、片側だけ引きつったようになって、うまく笑えません。顔面神経麻痺の人には伝わると思うんですけど、笑うと「ドゥフ」って、音がでてしまいます。
その瞬間に「ああ、まだ麻痺してるな」と実感します。人と話してるときは「恥ずかしいな」と感じてしまいます。

鏡の前で試してみても、写真を撮っても、そこには以前のような笑顔がありません。
そして思うんです。「あれ?笑えないって、こんなに気が滅入るんだな」って。

僕は普段、理学療法士として患者さんと接しています。
笑顔で話すこと、穏やかにうなずくこと、それだけで患者さんの緊張がふっとやわらぐ瞬間がある。
だから、笑顔は“仕事道具”の一つでもあったのかもしれません。

でも今はその“道具”が使えない。
患者さんと話すとき、「怖く見えてないかな」「無表情すぎないかな」と自分が気になってしまう。
そんな中で、僕が意識していることがあります。

それは、とにかく“手を使って話す”こと。
大げさなくらい手を動かして、「怒ってないよ」「ちゃんと笑ってるよ」って伝えるようにしています。
心はニコニコしてるんだけど、それが顔に出せないから、せめて手と声で伝える。
身振り手振り、声のトーン、うなずき…そういう全部を総動員して、「大丈夫だよ」と伝えるようにしている毎日です。

患者さんも、きっと気づいてくれているんだと思います。
「先生、最近ちょっと静かやね」と言われることもありますが、笑顔を作れない僕にとっては、それすらもうれしい反応だったりします。

それでもやっぱり、笑いたいです。
思いっきり、顔全体で、自然に、くしゃっと。
誰かの何気ない言葉で、思わず吹き出したくなるような、そんな笑顔を取り戻したい。
笑えないって、こんなにも気持ちが重くなるものなんですね。
改めて、“笑顔”の力を感じています。

でも、笑えないことで気づけたこともあります。
笑顔がなくても、気持ちは伝わる。
それは、普段の仕事の中でも、家族との関わりの中でも感じていることです。

そしてもうひとつ。
今までの僕は、無意識のうちに“人の目”を気にして、いつも笑顔でいなきゃ、と頑張っていたんだと思います。
でも、笑えなくなった今も、周りの人は意外と普通で、温かくて、受け入れてくれました。
そのときふと、「そんなに頑張って笑わなくてもよかったのかもしれない」と思えたんです。

これからは、心が笑ったときに笑おう。
そう思えるようになったのも、この経験があったからこそ。
本当の意味で、自分の表情に正直に向き合えるようになった気がしています。

今はまだ、“本当の笑顔”は戻ってきていません。
でも、手を動かしながら、声を乗せながら、心の笑顔を届けていく。
そんな日々を、これからも丁寧に過ごしていきたいと思っています。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございます。
よい1日を!

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