顔面神経麻痺と子育ての日々|笑えないパパと、笑ってくれる息子

顔面神経麻痺と子育ての日々|笑えないパパと、笑ってくれる息子

いつも仕事を優先して、通勤にも時間がかかる生活。
朝はわずか10分ほどしか一緒にいられず、帰宅して少し経つと、息子はもう眠る時間。
平日はすれ違いの毎日で、息子とゆっくり過ごせるのは休日だけ、という暮らしを続けていました。

そんな中、顔面神経麻痺を発症し、約3週間の休養を取ることになりました。
突然の出来事で不安も大きかったけれど、それと同時に、息子とたくさん一緒にいられる日々が始まりました。
体調的には大変な時期ではありましたが、息子との時間は、思いがけない贈り物のように感じられました。

ただその中で、「笑えない」「うまく話せない」という状態は、育児に思っていた以上の“壁”をもたらしました。
顔の表情がうまく作れないことで、息子にどう映っているんだろう?と不安になったり、心の距離ができてしまうような感覚に戸惑ったり…。
今回は、そんな日々の中で感じたことを、言葉にしてみたいと思います。


症状と育児への影響

顔面神経麻痺の症状は、人によって違うと思いますが、僕の場合は特に、右側の顔がほとんど動かなくなりました。
笑おうとしても口角が上がらず、目もうまく閉じられない。話すときも、口元がもたついて、発音が不明瞭になることがありました。

大人同士の会話でも、思うように伝わらなかったり、誤解されないかと不安になる場面があったのですが、
それ以上に気になったのは、1歳半の息子にどう見えているか、ということでした。

子どもは表情や声のトーン、ちょっとした仕草から相手の気持ちを感じ取るのがとても上手です。
だからこそ、「笑顔で接することができない自分」は、息子にとってどんな風に映っているんだろうと、考えてしまいました。

ふざけたつもりでも、顔が動かないと“楽しい”が伝わりづらい。
笑っているつもりでも、どこかぎこちなくて、逆に怖がらせてしまうんじゃないか…。
パパも嬉しい、楽しい事を伝えたいのに、楽しくないように見えているのではないか。
そんな風に思ってしまって、自分から関わるのをためらう瞬間もありました。

拍手をたくさんしたり、声のトーンを高くしたり、たくさん触れ合ったり、抱きしめたり、
楽しい事、愛してる事を伝えられる様に工夫もしました。

育児って、ただ“できること”をこなすだけじゃなくて、「心を通わせること」が本当に大事なんだなと、あらためて感じました。


息子の反応

そんな僕の不安をよそに、息子はいつも通り、変わらずにそばにいてくれました。

最初は「もしかして、違和感を感じているかな?」と探るような気持ちで接していましたが、
息子は僕の顔が動かなくても、声がうまく出なくても、特に戸惑う様子はありませんでした。

顔が笑えなくても、声が出にくくても、息子は僕を見て、そして笑ってくれました。
目が合っただけでニコッとするその笑顔に、こちらが救われる気持ちでした。
ギューッと、抱きしめて分かり合えた気がしました。
きっと子どもは、大人が思っているよりずっと、表情の“奥”にある気持ちを感じ取っているのかもしれません。

ふざけた声色に反応してくれたり、ぎこちない笑顔にも笑い返してくれたり、
おもちゃを持って「はい、どうぞ」と渡してくれるその姿に、「ちゃんと届いているんだ」と、何度も何度も安心させられました。

むしろ僕の方が、勝手に距離を感じていただけだったのかもしれません。
表情じゃなく、“関わろうとする気持ち”が何よりも大切なんだと、息子が教えてくれました。


気づいたこと

顔が思うように動かせない日々の中で、これまで当たり前だと思っていた“コミュニケーション”が、
実はとても繊細で豊かなものだったことに気づかされました。

子どもとの関わりにおいて、「笑顔」や「声」は確かに大切です。
でもそれがうまくできなくても、気持ちはちゃんと伝わる。
伝わるように関わろうとする姿勢があれば、言葉や表情が不完全でも、子どもはまっすぐ受け取ってくれる。
そう確信できたのは、息子と過ごしたこの時間のおかげです。

そして何より、僕が笑えなくても、息子が笑ってくれることで、心の中は何度も笑顔になれました。
「ちゃんと届いているんだ」と思えた瞬間に、安心とともに、少しだけ涙が出ました。


結び

顔面神経麻痺という経験は、身体的にも精神的にも簡単ではありませんでした。
でも、その中で得られた時間や気づきは、これからの僕の子育てや人生にとって、かけがえのないものです。

笑えなくても、心が笑っていれば、それはちゃんと届く。
そして、息子が笑ってくれると、僕はまた前を向こうと思える。

そんな風に、息子の笑顔に助けられました。
この経験を、これからも忘れずにいたいと思います。

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