顔面神経麻痺の神経伝導検査(NCS)とは?|発症12日目の理学療法士が検査結果と予後への不安に向き合う

顔面神経麻痺の神経伝導検査(NCS)とは?|発症12日目の理学療法士が検査結果と予後への不安に向き合う


はじめに

顔の動きがいつも通りにいかない。
鏡を見るたびに「どうしてこうなったんだろう」と思う。
そして、12日経った今も、まったく改善の兆しが見えない——。

現在、私は顔面神経麻痺を発症して12日目を迎えました。
理学療法士として「回復のプロセスは時間がかかることもある」とわかっていても、
当事者になると、頭と心のバランスはうまく取れません。

そんな中、先日私は神経伝導検査(NCS)を受けました
今の神経の状態を客観的に把握することで、少しでも「これから」を見通したかったからです。

でも正直なところ、検査結果を見ても、今の私はまだ不安の中にいます。
今の私は、ただ誰かに「絶対に良くなるよ」と、言ってほしい気持ちでいます。

この記事では、同じように不安を抱えている方に向けて、
顔面神経麻痺におけるNCSの意味と、どんな情報が得られるのかを、
私の実体験と理学療法士としての視点の両面からお伝えします。


神経伝導検査(NCS)とは?

NCS(Nerve Conduction Study)は、末梢神経がどれくらい電気信号を伝えられているかを調べる検査です。

顔面神経麻痺では、顔面神経を皮膚の上から電気で刺激し、
表情筋(眼輪筋や口輪筋など)から反応を記録します。

この反応を「CMAP(誘発筋電位)」と呼びます。

CMAPの振幅や潜時を左右差で比較することで、
神経の損傷の程度や、回復までの見通しがある程度わかってきます。


私がNCSを受けた理由

発症から7日が経っても、顔の動きにはほとんど変化が見られませんでした。
「このまま改善しないのでは?」という不安が強くなり、
今の状態を客観的に把握したいと思うようになりました。

医師と相談し、発症9日目にNCSを実施しました。
検査は電気刺激を用いるため少し不快感はありました(ほんとは痛かった。少しだからがんばって。是非検査受けて下さい)
でも、すぐに終わり、神経の伝導状態や損傷の程度を確認する結果が得られました。


NCSで何がわかるのか?

CMAPの振幅(反応の大きさ)

  • 健側と比べて80%以上保たれている
    → 脱髄主体 → 比較的早期に回復が期待できる
  • 10〜20%以下に低下
    → 軸索の変性が疑われる → 回復に数ヶ月以上かかる可能性あり

潜時(反応が出るまでの時間)

  • 遅れがあるが振幅が保たれている
    → 脱髄の可能性 → 予後は比較的良好

私の検査結果では、30%〜50%程度で、CMAPの振幅は健側に比べて低下していました。

その結果を見た瞬間、「やっぱり回復には時間がかかるかもしれないな」と感じました。


不安と向き合う

理学療法士の知識として、顔面神経麻痺は「多くの人が時間とともに回復する」ことを知っています。

でも、自分がそうなってみると、冷静ではいられませんでした。
今の状態に変化がないこと自体が怖いのです。

そんなとき、心の中で繰り返し思います。
「絶対に良くなるよ」——そう誰かに言ってほしい。

それは根拠のない励ましでもいい、
ただ今の自分を支えてくれる言葉がほしい。

この検査結果を受けて、「この数値なら良くなる人が多いな」と、少し前を向けます。

それが、今の変わらない現状から少しだけ心を助けてくれます。


おわりに

NCSは、顔面神経麻痺の「今」の状態を可視化してくれる大切な検査です。
結果がすべてを決めるわけではありませんが、
自分の現状を受け止め、これからの治療やリハビリにどう向き合うかを考えるヒントになります。

この記事が、同じように不安の中で過ごしている方の、
小さな安心材料や選択の参考になれば嬉しいです。

「絶対に良くなるよ」
今はその言葉を信じられなくても、私はそれを信じたい。
そして、そう言える日がくるまで、できることを一つずつ積み重ねていこうと思います。


免責事項

本記事は、筆者自身の顔面神経麻痺の体験と、理学療法士としての知識をもとにまとめたものです。

症状や経過には個人差があり、すべての方に同じことが当てはまるわけではありません。

医療的な判断や治療については、必ず医師など専門の医療機関にご相談ください。

この記事が、同じように悩みや不安を抱える方にとって、少しでも参考や安心につながれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました