顔面神経麻痺はこう回復した|発症から1ヶ月の経過と“未来は動き出す”実感
もしかして今、鏡を見るたびに不安な気持ちになったり、「このまま戻らなかったら…」と夜が怖くなったりしていませんか?
そう感じているあなたに、このブログが少しでも安心の材料になれば良いなと思いながら書いています。
僕は今、顔面神経麻痺を発症してから1ヶ月が経ちました。
振り返るとこの1ヶ月は、長かったような、あっという間だったような、色んな感情にもなったし、不安定にもなったし、いままでの人生の振り返りをした、不思議な時間でした。
医療従事者としての知識と、でも感じる「多くの人が治るから」なんて楽観視できないひとりの人間としての不安。その両方を抱えながら、毎日を過ごしてきました。
顔面神経麻痺を発症された皆さんと同じように、不安で安心できる様な記事はないか貪るように探していた1ヶ月前の自分を、少し懐かしく感じながらいまこの記事を書いています。
この1ヶ月の経過や気持ちの変化について書いた記事は、僕にとって大切な記録になっていますが、
以下のような記事でも、違った視点からこの経験を綴っています。
- 顔面神経麻痺 発症から10日目|症状の変化と今の生活、そして理学療法士として思うこと
- 伝える側から、経験する側へ|顔面神経麻痺を経験した理学療法士の想い
- 顔面神経麻痺を発症して気づいたこと|理学療法士として、患者として、教育者として
少しでもいま不安の中にいる誰かの、何かの役に立てればとっても嬉しいです。
発症と診断、そして始まった治療
ある夜、寝ていると「なんか顔がしびれてる感じがするなぁ〜。」
寝ぼけながら、まぁ寝違いかぁ、、と思いながら一晩過ごしました。
朝起きて口をゆすいだら、口から水が漏れる。「あれ?」と違和感を覚えました。
もう一度行っても、口から水が漏れる。急いで洗面所の鏡に向かい、鏡をみて顔を動かしてみました。
右まぶたが閉じにくく、笑おうとしても、右の頬が動かない。右の麻痺だ。手足は動くか? 手足は麻痺はなさそうだ。
「ふぅ」おそらく末梢神経だ。救急車ではなくても大丈夫だ。子どもと寝ている妻を起こし、病院に連れて行ってもらいました。
早朝で救急の時間帯でした。CT、MRI検査、血液検査を受け「特発性末梢性顔面神経麻痺(いわゆるベル麻痺)」との診断が下されました。
医師からは、「ウイルスの再活性化や、免疫反応が原因で顔面神経に炎症が起きている可能性が高い」と説明されました。
幸い、脳に異常はなく、職業柄顔面神経麻痺のおおよその予後は理解しており、胸を撫で下ろしました。
救急から耳鼻咽喉科へ紹介され、治療としてプレドニゾロン(ステロイド薬)を60mg/日からで内服開始しました。
顔面神経麻痺の発症から72時間以内にステロイドでの治療を開始することが有効とされています。
自分の場合は寝る前は問題なしで、発症を確認した朝には病院へ行き、12時には服薬を開始していたので、長く見ても15時間以内に服用が開始できたことも僕を少しばかり安心させました。
また、アデホスコーワ(血流改善薬)とメコバラミン(末梢神経の修復促進)、バラシクロビル(ウイルスの再活性化を抑える)も併用されました。
僕自身、理学療法士として神経疾患に触れてきた経験があります。
だからこそ、回復には「時間がかかること」や「全てが元通りにはならない可能性があること」「でも多くの場合で元通りに近く治ること」も頭では理解していました。
でも、それでも、「自分がなる」とは思っていなかったし、実際に経験してみると、知識だけでは到底足りない感情の波が襲ってきました。
日々の変化と、小さな“希望”
発症直後はまだまぶたも少し動き、ほほも少し動いたのですが、徐々に動かなくなり、5日目には右側の顔面全体の動きが全くなくなり、瞼も頬もピクリとも動きませんでした。
瞬きができない目は乾燥し、涙が流れ続けました。食事の際には食べこぼし、右側(麻痺側)のほほには食べ物が挟まり指で掻き出さないと取れませんでした。
日常生活の小さなことがこんなに大変になるとは想像していませんでした。
何より辛かったのは、“笑えないこと”。
1歳2ヶ月の息子が笑いかけてくれても、僕の顔はうまく応えられない。
「伝えたい気持ちが、顔で表現できない」——それは、思っていた以上に孤独で、悔しいものでした。
そんな中でも、僕は毎日、自分の顔の状態をスマホで記録しました。
表情、まばたき、口の動き、言葉を発するときの違和感——
その中で、発症から2週間が過ぎた頃、右のまぶたや頬が“少しだけ”動いたのを感じたんです。
その瞬間、「あ、動いたかも」と思わず声が出ました。
わずか1mmの動きでも、それは確かな回復の兆しであり、何よりも希望でした。
そこからは、日に日に本当にわずかずつですが、動きが増えてきました。
表情の変化を記録しながら、「確実に良くなっている」という手応えを少しずつ積み重ねていったのです。
少し動いた時の気持ちをこの時のブログもよろしければみてみて下さい。
理学療法士としての視点と、患者としての実感
神経の回復には段階があります。
まずは「脱髄」といって、神経の周りを守る膜が傷つくことで機能が低下します。
その後、「再髄鞘化」といって、少しずつその膜が修復されていき、やがて神経の信号が通るようになるのです。
顔面神経は細く、そして長いため、完全な再生には数ヶ月〜半年以上かかるケースもあります。
患者さんにそう説明してきた自分が、今は「待つ」立場にいる。
焦らず、神経に過剰な刺激を与えず、それでも諦めずに日々の中で“できること”を模索してきました。
回復の過程としては:
- 神経の回復が起きること
- 回復してきている神経につながる筋肉を過剰に使用して回復を遅らせないこと
- 顔の軟部組織の伸長性を保つこと(筋肉や皮膚の伸びる力を保つこと)
- 回復してきている神経が誤ってつながってしまわないように、無理に顔を動かしすぎないこと
やることとしては:
- 時折顔のマッサージをする
- 動くようになった筋肉を鏡を見ながら、その筋肉だけを動かすように3回程度動かす(動かし過ぎに注意)
- 栄養よく食べ、よく眠る
- 仕事で頑張りすぎてストレスを貯めない
※この時期は動かしすぎだけはNG
現在の状態と、これからの見通し
1ヶ月が経った今、まばたきは9割閉じれるようになりました。
口角も意識すれば少し動くようになりました。
ただし、表情にはまだ左右差があり、「ドゥフ」と漏れるような発音の違和感や、
笑顔を作ったときの左右非対称差は残っており、マスクやメガネを外して人と話すことはできていません。
それでも、食べやすく、飲みやすくなっており。日常生活はかなり改善し、何より「回復してきている実感」が支えになっています。
同じ経験をしているあなたへ
僕も、発症直後はたくさんの体験談を読みました。
「3日で動いた」「半年かかった」「後遺症が残った」——すべて本当だと思います。
でも、ひとつだけ共通していたのは、「回復には時間がかかる」ということ。
だから、今日うまく動かなくても、明日は少し違うかもしれません。
1mmの動きが、1週間後には5mmになるかもしれない。
そんな希望を信じることが、今の自分にできる最大の治療なのだと思います。
最後に:顔面神経麻痺は、ちゃんと回復に向かう
この1ヶ月、正直しんどい日もありました。
でも、顔面神経麻痺は多くの場合「治らない病気」ではありません。
末梢神経は、時間とともに回復する力を持っています。
今、不安でいっぱいのあなたへ。
すぐに良くならない日々が続いても、回復は、確かに進んでいきます。
僕の経験が、ほんの少しでもその証明になりますように。
また、2ヶ月目、3ヶ月目の経過もお伝えできたらと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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