顔面神経麻痺と趣味の再開|「もう一度楽しめる日が来るのか」と思っていた日々

顔面神経麻痺と趣味の再開|「もう一度楽しめる日が来るのか」と思っていた日々

顔面神経麻痺を発症してから1ヶ月。ふと、「また、あの時間を楽しめる日が来るのだろうか」と思うことが何度もありました。

僕の趣味は、サウナ、ランニング、山登り。どれも心と体をリフレッシュさせてくれる、大切な時間でした。

でも発症後は、そんな“当たり前の楽しみ”に、なかなか手を伸ばせませんでした。というより、怖くてできなかったんです。「無理に動かしたら悪化するかもしれない」「体を温めすぎたら神経に負担がかかるかもしれない」そんな風に思って、ずっと距離を置いていました。

再開をためらった理由

サウナは、高温の環境に長時間いることで血流が変化します。それが神経の回復にどう影響するか分からず、控えていました。

ランニングや山登りも、疲労やストレスが回復を妨げるかもしれないと考え、なかなか踏み出せずにいました。

実際、仕事には復帰しており、家に帰れば育児もあります。生活は元に戻りつつあるのに、ストレスを発散する手段だった趣味だけが戻ってこない。気づけば、どんどんストレスが溜まっていく日々でした。

そもそも、僕は顔面神経麻痺の発症原因のひとつに“過剰なストレス”があるのではと感じていました。にもかかわらず、ストレスを発散できない状態が続く。これは本当にまずいかもしれない、と焦りのような気持ちも生まれてきました。

1ヶ月検診が後押しになった

そんな中、発症から1ヶ月後の検診で、医師から「メコバラミンとアデホスコーワを継続して、神経の自然回復を見ていきましょう」と言われました。

完全に「もう大丈夫」と言われたわけではありません。でも、「今まで通りの生活を大きく制限する必要はない」というニュアンスも感じ取れたんです。

それをきっかけに、「自分の体と相談しながら、少しずつなら再開してもいいかもしれない」と思えるようになりました。

無理のない範囲で、少しずつ

まずは、歩くくらいの速度でランニングを始めました。元々僕は、早朝5:30〜6:00頃に走るのが好きで、まだ町が眠っているような静けさの中を走るのが心地よかったんです。

その日も走りながら、「ああ、こういう時間が好きだったな」と思い出し、走るほどにどんどんストレスが抜けていくのを感じました。

疲れが残らないように注意しながら、徐々に徐々に負荷を上げています。ランニングを再開して約2週間ほど経ちますが、その間も日に日に顔の動きは良くなってきていると感じています。

もしかしたら、ランニングをしていなかったら、もっと早く回復したのかもしれません。それは誰にも分かりません。ただ、僕は「ストレスを減らす」ことを優先し、ランニングを通じて心の健康を保ちながら顔の回復を待つという選択をしました。

サウナについても同じ時期に再開しました。普段は3セット入るところを、2セットに。追い込まず、サウナも水風呂も“ちょっと物足りない”くらいでやめて、徐々に慣らしていくようにしました。

理学療法士という立場からも、回復には「実施してみて、経過を追うこと」で良し悪しを判断します。だからこそ、自分の体の反応を見ながら試し、修正していく。そんなスタンスで再開に踏み切ったという面もあります。

「できること」より「やってみようと思えたこと」

顔面神経麻痺になると、顔の動きばかりに意識が向きがちです。今日の表情は?口角は上がってる?食べ物はこぼれない?

でも、少しずつ趣味を再開していく中で、「身体は全体でつながっている」と改めて感じました。顔が治ることだけが“回復”ではなく、心や気持ちもまた、回復の大事な一部なのだと。

再開のタイミングに正解はない

今回の経験を通して感じたのは、「再開していいタイミング」に正解はない、ということです。

同じ顔面神経麻痺でも、症状や回復スピード、生活スタイルは人それぞれです。だから、「○ヶ月たったからOK」と言えるものではありません。

僕にとってのきっかけは1ヶ月検診でしたが、それもあくまでひとつの背中の押され方に過ぎません。

おわりに:日常が少しずつ戻る喜び

少しずつでも、また自分の“好きなこと”と向き合える時間が戻ってきたこと。それは、症状の改善以上に大きな希望でした。

趣味の再開は、単なる娯楽ではなく、自分自身と向き合うための時間だったのかもしれません。

もし今、再開のタイミングを迷っている方がいたら。焦らなくて大丈夫です。まずは「またやりたいな」と思えたその気持ちを、大切にしてほしいなと思います。

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